パラニューロンについては“腸の自動能”を理解すると分かりやすいと思います。

 腸の中に食物が入ると、化学センサーが内容物の情報を感知し、その情報が胃、膵臓、肝臓、胆嚢などに伝えられ、必要な酵素が分泌されるなどの反応を引き起こします。同時に腸のぜん動運動によって内容物が運ばれていきます。

 このような腸の働きは中枢とは完全に独立しており、たとえ脳死や植物人間になったとしても、この機能は維持されるそうです。

 これを「腸の自動能」と言います。

 解剖学者の藤田恒夫氏は、自著『腸は考える』(岩波新書)の中でこの用語を紹介しています。

 パラニューロンという概念は、1975年に当時の新潟大学の解剖学研究室に所属していた藤田氏らによって提唱されたもので、“ある共通した機能を持った細胞群”の総称です。

 その“共通した機能”とは、刺激を感知するセンサー細胞としての働きと、ホルモンなどの化学物質を放出する分泌細胞としての働き、この両方を併せ持っていることを指します。

 その代表例が腸の基底果粒細胞で、頭部はセンサーのアンテナを立てて刺激を感知し、尾部は果粒に蓄えているホルモンを放出するという、一人二役の細胞です。

 藤田氏らはこの細胞を「自らが感じて自らが放出する」ということから“受容分泌細胞”と呼んでいます。

 皮膚の中に触覚を感知するメルケル細胞というものがありますが、これもまったく同じ働きを持っています。ほかにも味覚を受け取る味細胞、松果体の細胞、網膜の視細胞、膵島・下垂体などの内分泌細胞などが、同じ機能を持っています。

 これらの細胞は「組織学的にはニューロンとは異なるが、その役割はニューロンとほとんど変わらない」ことから、ニューロンの仲間という意味でパラニューロンと命名されました。

 もっともニューロン自身、先端で刺激を感知して末端(シナプス)でアセチルコリンなどの伝達物質を放出するという点において、パラニューロンと何ら変わりはありません。

 ただニューロンの場合、頭部から尾部までの距離が異常なほど長い(神経線維が介在している)ことが、唯一ほかのパラニューロンとは異なるところでしょう。

 ところで、組織学的にはニューロンでありながら、神経伝達物質をシナプス外に放出する特殊な受容器があります。“サイレント受容器”と呼ばれるものです。

 これは消化管において、平常時には全く反応しないのに、ひとたび炎症がおこるとあらゆる刺激に反応する侵害受容器として、以前から知られていました。

 その後ネコの膝関節の中に発見され、今では人間の関節や内蔵器官に幅広く存在していることが分かっています。

 このサイレント受容器(専門の医学用語ではsilent afferent neuron あるいはsilent receptorsと表記されます)は、炎症の存在下で神経伝達物質を放出し、これが血中に入ることが確かめられています。

 この神経伝達物質が血液の流れに乗って脳に辿り着けば、そのあとはNDNの理論 によって、謎に包まれている深部痛の多くが説明できるのではと考えられています。