関節7つの精密機能(目次)
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➡関節1)応力を分散させる免震機能-関節包内運動-
➡関節2)振動を吸収する制震機能-脳を守る骨格ダンパー-
➡関節3)衝撃をブロックする断震機能-関節内圧変動システム-
➡関節4)関節軟骨の神秘-“知的衝撃吸収”機能-
➡関節5)関節軟骨の神秘-驚異の摩擦係数-
➡関節6)潤滑オイルの自動交換システム-滑膜B型細胞の“受容分泌吸収”機能-
➡関節7)関節受容器によるフィードフォワード制御
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番外編
➡関節は振動エネルギーを熱エネルギーに変える変換装置!?
➡膝関節の内圧は陽圧?陰圧?

 
 一般に車のサスペンションはスプリング(ばね)とショックアブソーバーの両方があってはじめて機能します。スプリングは路面からの衝撃をやわらげてくれますが、それだけだと弾み続けてしまいますので、その振動を抑えるためショックアブソーバーも付いているのです。

 ショックアブソーバーの多くは筒状のシリンダー構造になっていて、マウンテンバイクにも採用されています。これと同じものが電車や橋梁にも使われており、その場合ダンパーと呼ばれます。

 積水ハウス(株)のテレビCMにあった「地震のエネルギーを熱エネルギーに変えるシーカス(SHEQAS)」というのはいわゆる“制震ダンパー”と呼ばれるもので、ダンパー内に高減衰ゴムが仕込まれており、地震による振動エネルギーがゴムの摩擦熱に変換される仕組みになっており、それにより地震の揺れを抑えようとするものです。

 
 子供のころ木から飛び降りたり、ブランコの勢いそのままに飛んで着地したり、そんな遊びをした人は多いと思います。スポーツのあらゆる場面においても飛んだり跳ねたりといった動作はつきものです。このとき人体に加わる衝撃は最大で体重の3倍になります。たとえばバレーボールやバスケットのジャンプで着地した際の衝撃エネルギーは60キロの人であれば180キロ(床反力計による計測値)になるわけです。

 こうした衝撃から生体を守る際、最も厳重に守らなければならない組織は“脳”です。脳は木綿豆腐のような強度しかなく、極めて衝撃に弱い組織です。もし豆腐に180キロの衝撃が加わったらどうなるか…、言うまでもありませんね。

 したがって人間は脳とそれに直結する脊髄を守るため、【防御壁】【液性クッション】【骨格ダンパー】という3重の防御体制を築いています。 むき出しのまま張り巡らされている末梢神経とは対照的に、中枢神経である脳~脊髄は“頭蓋骨~背骨”といういわば「コンクリート性の防御壁」によって厚く保護されています。

 さらに防御壁の内側に水(脳脊髄液)を満たすことで、液性クッションとして機能する緩衝帯を設けています。水で満たされたフラスコ容器に蓋をして、それを逆さまにした形状をイメージすると、ちょうどその中に脳~脊髄が浮かんでいるような態様です。

 次に【骨格ダンパー】についてですが、これは『①脊柱の連結 ②脊柱の彎曲 ③骨盤の仙腸関節』という3つの要素から成り立っています。脊柱は“柱”と言ってももちろん文字通りの柱とは違います。その実態は頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙骨1個の計25個の骨が連結して柱状になったものです(実際にはこれに尾骨も加わります)。それぞれの連結部分の前方に椎間板、後方に関節、中央の空洞(いわばトンネル)に脊髄が入っています。

 

①脊柱の連結
 建坪10坪程度の小さな平屋建ての家があったとします。その屋根は平坦で、まるでコンテナのような家です。この家には積層ゴムによる免震装置が付いています。その積層ゴムは通常のものとは異なり、ジャンボ旅客機の巨大タイヤを寝かせたような形状で、家の床面積の2/3を占めるようなビッグサイズです。もしこの家を海上に浮かべたら、ホーバークラフトに間違われるかもしれません。そんな家が25軒あります。

 この家を一つずつ上に向かって積み上げていくと、ちょうど25階建てのビルのようになります。このビルの屋上に巨大ドリルで大穴をあけ、そのまま1階まで貫通させます。そうして空いた空洞にこれまた巨大な水道管を通します。ビルの後方には電車の車両間の連結-床の鉄板同士が重なっていて、その空間を蛇腹状の幌で覆ってある部分-と同じものを縦方向にして上下の家同士を連結させます。連結をより確かなものにするため、左右2カ所にこれを取り付けます。ビル全体では24箇所に2組ずつ、つまり合計48の連結箇所が生まれます。

 このビルを真正面から見ると、各階の境目に巨大タイヤが寝た状態で挟まっているのが見えます。後ろから眺めると、その境目の空間を埋めるように電車の連結部分が倒立した状態になって2対並んでいるのが見えます。

 何を説明しているのかもうお分かりですね。これが脊柱です。このビルの屋上に頭蓋骨が乗って、その中に脳が浮かんでいます。水道管の中にはもちろん脊髄が入っています。寝かされた巨大なタイヤが椎間板で、電車の連結部分が関節です。

 人間がジャンプして着地した際、弾性に富んだ椎間板-24個の積層ゴムによる制震装置-と縦方向の平面関節-48個の制震ダンパー-が、いっせいに働いて衝撃を吸収しているのです。これはなかなか圧巻の装置だと思いませんか。極論すれば、人間の脊柱はそれ自体が“制震ダンパー”だと言えるでしょう。

 

②脊柱の彎曲
 脊柱は横から見るとS字状に彎曲しています(下図)。腰椎は前方に凸のカーブ、胸椎は後方に凸のカーブ、頸椎は腰椎と同じカーブを描いています。この彎曲は縦方向(長軸方向)の圧力に対して抵抗力を増幅させる効果があり、工学上の計算ではまっすぐな脊柱より10倍の抗力があるとされています(抗力=カーブの数の二乗+1)。 

 このことから、まっすぐな形状の剣よりも、わずかな曲線を持った刀のほうが固いものを突き刺したときに、折れにくいということが言えるわけです。ただし脊柱は刀とは違い、24個の連結部分を持ったいわば“関節の集合体”ですので、上記の抗力をそのまま適用していいのかどうかについては微妙な気がいたします。

 ここからは私見ですが、脊柱の彎曲は柳の枝のような“しなり”効果を生み、縦方向の圧力に対して抵抗するというよりも、むしろ吸収する-垂直方向への変位ベクトルの向きを変える-働きを担っているのではないかと思われます。

 ここで、電車の衝突実験を想像してみたいと思います。5両編成くらいの電車を100キロ超のスピードで衝突させたとき、最後部の車両に加わる衝撃エネルギーを測定する実験です。このときレールが直線になっていて、すなわち電車がまっすぐな状態で衝突した場合と、レールが緩やかなカーブを描いていてすなわち電車がカーブを描いている状態で衝突した場合を比較すると、前者では衝撃が最後部まで伝わりやすく、相当レベルのエネルギーが計測されるであろうと想像されます。

 それに対して、後者の場合はおそらくカーブの途中に応力が集中し、2両目と3両目あたりの連結部分が切断され、かつ脱線することでエネルギーの伝達が弱められ、その結果前者よりも小さい値が計測されるのではないかと想像します(もちろん脱線そのものは前者でも発生するでしょうけれど、衝突した瞬間の最後部車両への衝撃は直線のほうがよりダイレクトに伝わるものと思われます)。 

 人間の場合、高所からの転落事故など、より大きな衝撃が垂直方向に加わったとき、電車と同じように脊柱カーブの途中のどこかの連結部分(関節)に応力が集中し、そこに脱臼骨折が発生し、そのことで頭部への衝撃が減衰され、結果的に脳を守る仕組みになっているのではないでしょうか。

 脊髄損傷によって下半身麻痺になったとしても、そのことで脳が守られている、つまり生命が守られたのだと考えると「脊柱の彎曲は垂直方向への力を減衰させる効果があり、それでも受け止め切れない大きな外力に対しては自ら(脊柱)が破断することで衝撃力の伝達を弱めて、脳すなわち生命を守る形態になっている」と、言えるかもしれません。

 このことから、まっすぐな形状の剣よりも、わずかな曲線を持った刀のほうが固いものを突き刺したときに、折れにくいということが言えるわけです。ただし脊柱は刀とは違い、24個の連結部分を持ったいわば“関節の集合体”ですので、上記の抗力をそのまま適用していいのかどうかについては微妙な気がいたします。

 ここからは私見ですが、脊柱の彎曲は柳の枝のような“しなり”効果を生み、縦方向の圧力に対して抵抗するというよりも、むしろ吸収する-垂直方向への変位ベクトルの向きを変える-働きを担っているのではないかと思われます。

 ここで、電車の衝突実験を想像してみたいと思います。5両編成くらいの電車を100キロ超のスピードで衝突させたとき、最後部の車両に加わる衝撃エネルギーを測定する実験です。このときレールが直線になっていて、すなわち電車がまっすぐな状態で衝突した場合と、レールが緩やかなカーブを描いていてすなわち電車がカーブを描いている状態で衝突した場合を比較すると、前者では衝撃が最後部まで伝わりやすく、相当レベルのエネルギーが計測されるであろうと想像されます。

 それに対して、後者の場合はおそらくカーブの途中に応力が集中し、2両目と3両目あたりの連結部分が切断され、かつ脱線することでエネルギーの伝達が弱められ、その結果前者よりも小さい値が計測されるのではないかと想像します(もちろん脱線そのものは前者でも発生するでしょうけれど、衝突した瞬間の最後部車両への衝撃は直線のほうがよりダイレクトに伝わるものと思われます)。

 人間の場合、高所からの転落事故など、より大きな衝撃が垂直方向に加わったとき、電車と同じように脊柱カーブの途中のどこかの連結部分(関節)に応力が集中し、そこに脱臼骨折が発生し、そのことで頭部への衝撃が減衰され、結果的に脳を守る仕組みになっているのではないでしょうか。

 脊髄損傷によって下半身麻痺になったとしても、そのことで脳が守られている、つまり生命が守られたのだと考えると「脊柱の彎曲は垂直方向への力を減衰させる効果があり、それでも受け止め切れない大きな外力に対しては自ら(脊柱)が破断することで衝撃力の伝達を弱めて、脳すなわち生命を守る形態になっている」と、言えるかもしれません。

③骨盤の仙腸関節
 関節は袋状の組織に覆われており、これを関節包と言います。この一部が強靭化したものが靭帯です。靭帯は一般には関節の強度を補うだけのいわば補強部材のように考えられていますが、実際は伸縮性のある立派な弾性材です。

 女性の出産時に骨盤腔が開大する際、恥骨結合の靭帯がゴムのように伸びることが知られていますし、関節のストレステスト(靭帯の断裂の有無を調べる検査)などでもその伸縮性を確かめることができます。

 靭帯は膠原線維(コラーゲン)、弾力線維、細網線維で構成される線維組織と、線維間の摩擦を減少させるゼラチン物質でできており、なかでも弾力線維は2倍以上に伸びることが分かっています。この弾力線維は脊柱の靭帯(項靭帯や黄色靭帯など)に多く含まれるため、脊柱は極めて弾力性能に富んでいると言えます。

 さらに靭帯はその設置方向に多様性を持たせることで様々な外力に対応しています。たとえば水平に力が加わる転倒モーメントには縦方向に伸びる靭帯が抵抗を負担し、せん断力に対して斜めに走行する靭帯が相応の働きを担います。

 そうした靱帯走行の多様性を見事に体現しているのが、骨盤の中にある仙腸関節です。この関節は脊柱の最下部を左右の腸骨に挟まれ、骨盤内に浮かんだ状態で上半身の体重を受け止める構造になっており、縦横斜めに張りめぐされた靭帯群は太く頑丈なものが多く、極めて高度な弾力性能を発揮します。

 仙腸関節はその“構造の特殊性”と“靭帯走行の多様性”と“靭帯の強度”という観点から、まさしく人体最強のダンパーだと言えるでしょう。

関節7つの精密機能(目次)
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➡関節2)振動を吸収する制震機能-脳を守る骨格ダンパー-
➡関節3)衝撃をブロックする断震機能-関節内圧変動システム-
➡関節4)関節軟骨の神秘-“知的衝撃吸収”機能-
➡関節5)関節軟骨の神秘-驚異の摩擦係数-
➡関節6)潤滑オイルの自動交換システム-滑膜B型細胞の“受容分泌吸収”機能-
➡関節7)関節受容器によるフィードフォワード制御
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