個体差を無視する絶対医学とこれを重視する相対医学

 新型コロナウイルスは人類に絶対医学の限界を見せつけました。絶対医学とは汎用的かつ絶対的なガイドラインを定めて、これによる一律的な介入を行う医療哲学です。保険点数が設定しやすく投薬管理が容易である一方、徹底して個体差を無視する医学だと言えます。

 基本的に現代西洋医学の多くは絶対医学を柱として発展してきました。コレステロール値や高血圧の医療に象徴されるように、年齢や病歴を問わず学会が定めた基準値の下に一律に管理する方式が絶対医学です。

 これに対して個体差を重視する医療体系が相対医学です。これは各個人の年齢、職業、体質、家族歴、既往歴、ライフスタイル等々を鑑みて実践されるオーダーメイド医療です。予防医学を含意する多次元リスク管理医療であり、単一基準値に拘泥することなくケースバイケースで各個人に最適な医療を提供します。

 絶対医学、相対医学それぞれに長所短所がありますが、ひとつ言えることは内的統制型のヒトは相対医学と、外的統制型のヒトは絶対医学と親和性がある(相性がいい)ということ…。

心理学用語
内的統制…自分原因論の思考モデル。困難に直面したとき自分に原因があると考え、自己変革によってレジリエンスを発動させる。

外的統制…他者原因論の思考モデル。外の世界に問題があると考え、他者を変えようとする。概して自己変革には後ろ向き。

 
 外的統制型のヒトは基本的に医者任せ(安易に薬に頼る)傾向が強いため、数値管理に抵抗がない人が多い。むしろ医者に管理されることに安心感を覚えやすい。

 このような外的統制タイプと親和性の高い絶対医学…、しかしこれに偏った医療システムには負の側面があります。とかく“医療費高騰”に繋がりやすいという性質が…

 
 他方、内的統制型のヒトは健康管理に対する意識が高い傾向があり、自らセルフケアを実践することで結果的に医療費抑制に貢献します。

 仮に内的統制型が国民の大多数を占めるのであれば、そもそも医療費高騰とは無縁な社会になっているでしょう…、しかし決してそうはならない。内的統制型と外的統制型の人類の比率はおそらく一定に保たれている。

 その理由は種の保存原則-ダイバーシティ-の観点で説明できるのかもしれません。文明が繁栄し続けるためには、おそらくこうした比率も目に見えない何らかのダイバーシティ&インクルージョンの一つとして機能しており、適切なバランスに維持されているのだと思われます。

 ですから「人類がみな内的統制型になればよい」などという帰結は安直の極みであり、現状の平衡状態こそが文明保守の摂理に叶っていると見なすのが妥当でしょう。

 以上を踏まえた上で、しかし絶対医学に偏っている現状は決して医療経済学の面からも好ましいものではなく、相対医学へ徐々にシフトすべきというのが当会の見方です。

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新型コロナウィルスが教示した相対医学へのシフト

 地球環境の激変は“今後もずっとそこにあり続ける脅威”という認識に異を唱える人は少数派でしょう。地球温暖化という概念を辞書から消し去っていいという道理はない。

 ウィルスの発生源に関する研究はこれからも続くでしょうけれども、もし地球環境の変化とウィルス発生のあいだに何らかの関係があるとするならば、我々人類は今後もしばらくは未知なるウィルスとの遭遇を繰り返していくことが想定されます。

 であれば、絶対医学に偏重した医療の下では、一般国民は新種ウィルスが発生するたび神頼みならぬワクチン頼みに終始するしかありません。ワクチン製造を心待ちにして、そしてワクチン集団接種が完了しない限り、毎回毎回私たちは“引きこもらなければ”ならない…。

 しかし相対医学にシフトした医療の下では、AIとビッグデータを活用した個体差診断による個別介入(個人の免疫機能を評価することで感染したとしてもリスクが低いタイプ、感染後に重症化しやすいタイプといった個別対応を軸にした医療体制)が広く普及され、ハイリスクタイプの人を真っ先に庇護する政策が採用されるはず。

 健康な人々が自粛するのではなく、最初にハイリスク集団を見つけて、その人たちの防衛策を最優先させる、すなわち弱い人たちをピックアップして重点的に守る手法が採られる未来…。

 もちろん実現に向けて高い壁はありますが、このやり方であれば経済のダメージを最小限に抑えることができます。何より多くの人命が守られます。さらに個体差を前提にして、ワクチンを打つメリットが小さい個人-ワクチンのデメリットがメリットを上回る人ーに同調圧力が及ばない世の中、すなわちワクチンを打たない人に対する誹謗中傷、差別のない健全な社会になります。

 必要のない人に無理やり打たせるといったワクチンパスポート制を敷く必要がなくなる。「ワクチン接種の証明書がなければ就職できない、イベントに参加できない、飛行機に乗れない」などといったワクチン差別がまったく起こり得ない世の中になるはずです。

 とは言え、個体差を重視する相対医学へのシフトには相応のプロセスが不可欠です。持続可能な開発目標を複数掲げて世界全体が取り組む必要があります。まさしく医療版SDGsです。

 当会はこの概念を「SDGs+M」と命名して、世界に提起します(MはMedicalの頭文字)。

 開発目標の中に当会が唱える「認知科学診療科(認知診療科)の創設」が含まれるべきであり、痛みの原因診断の世界統一モデルー脳内ニューラルパターン解析技術を駆使したソフトペインとハードペインの鑑別を第一義的に行う外来システムーの実現を期待します。
 
 最後に総括させていただきます。

 絶対医学の下では「新種ウィルスの発生➡ロックダウンまたはそれに準ずる国民総自粛➡ワクチンによる集団免疫」という流れ。これに対し、相対医学の下では「新種ウィルスの発生➡抵抗力を持つヒトと持たないヒトの違いを解析➡ハイリスク集団の防衛策➡ハイリスク集団優先のワクチン投与」という流れになります。
 
 今こそ医療界は絶対医学の殻を破って相対医学への道を切り拓くべきではないでしょうか。せっかく新型コロナウィルスがそれを教えてくれたのですから