個体差を無視する絶対医学とこれを重視する相対医学

 絶対医学は当会による造語で、汎用的かつ絶対的なガイドラインを定めて、これによる一律的な介入を行う医療哲学を指します。保険点数が設定しやすく投薬管理が容易である一方、徹底して個体差を無視する医学だと言えます。

 基本的に現代西洋医学の多くは絶対医学を柱として発展してきました。コレステロール値や高血圧の医療に象徴されるように、年齢や病歴を問わず学会が定めた基準値の下に一律に管理する方式が絶対医学です。

 これに対して個体差を重視する医療体系が相対医学です。これは各個人の年齢、職業、体質、家族歴、既往歴、ライフスタイル等々を鑑みて実践されるオーダーメイド医療です。予防医学を含意する多次元リスク管理医療であり、単一基準値に拘泥することなくケースバイケースで各個人に最適な医療を提供します。

 絶対医学、相対医学ともに長所短所(光と影)がありますが、絶対医学における影の領域として、やはりポリファーマシーを抜きにして語ることはできません。

※ポリファーマシー…多剤併用による薬害全般を表す用語。複数医療機関による重複投薬や薬物間相互作用リスク(深刻な副作用)、さらに残薬の問題(薬品ロス)等々。これらは絶対医学ならではの問題と言うことができる。→関連記事(BReIN減断薬アプローチ)

 絶対医学に偏っている現状は決して医療経済学の面からも好ましいものではなく、相対医学へ徐々にシフトすべきというのが当会の見方です。

薬品ロスを減らすためにも相対医学へのシフトを模索すべき

 とは言え、個体差を重視する相対医学へのシフトには相応のプロセスが不可欠です。持続可能な開発目標を複数掲げて世界全体が取り組む必要があります。まさしく医療版SDGsです。

 当会はこの概念を「SDGs+M」と命名して、世界に提起します(MはMedicalの頭文字)。近年衣食住ロス~衣類ロス・食品ロス・マンション売れ残りや空き家問題~についてはメディアで紹介されることが多いですが、その一方で薬品ロスの実態~患者の飲み忘れ等による年間数百億円規模の廃棄~を取り上げるマスコミは僅少です。そのため多くの国民はこの事実を知りません。
 

 薬品ロスが生み出される背景には間違いなく絶対医学があります。したがって相対医学へのシフトこそが解決への近道と言えますが、この問題は根が深い…。

 薬品ロスのみならず、他の様々な次元を鑑みても、医療におけるSDGsという視点は非常に重要な問題だと言えます。

 鎮痛剤の濫用に関わる問題、慢性痛におけるドクターショッピングの問題等を踏まえ、SDGs+Mの開発目標の中には、当会が唱える「認知科学診療科(認知診療科)の創設」という視点も含まれるべきであり、痛みの原因診断の世界統一モデルー脳内ニューラルパターン解析技術を駆使したソフトペインとハードペインの鑑別を第一義的に行う外来システムーの実現を期待します。

新型コロナウィルスが教示した相対医学へのシフト

 新型コロナのような人獣共通感染症ウィルスに関しては、これまでの歴史が示している通り、我々人類は今後もその脅威にさらされ続ける可能性が高い。

 であれば、絶対医学に偏重した医療の下では、一般国民は新種ウィルスが発生するたび神頼みならぬワクチン頼みに終始するしかありません

 そして「社会活動を正常化させるためにはワクチン集団接種以外に方法がない」というレトリックに縛られることになります。これは同時に「私たちは新種ウィルスが発生する度、一定期間の自粛を強いられる」ことを意味します。

 しかし相対医学にシフトした医療の下では、AIとビッグデータを活用した個体差診断による個別介入(個人の免疫機能を評価することで感染したとしてもリスクが低いタイプ、感染後に重症化しやすいタイプといった個別対応を軸にした医療体制)が広く普及され、ハイリスクタイプの人を真っ先に庇護する政策が採用されるはず。

 “国民総自粛”ではなく、最初にハイリスク個体を抽出して、その人たちの防衛策を最優先させる、すなわち弱い人たちをピックアップして重点的に守る手法が採られる未来…。

 もちろん実現に向けて高い壁はありますが、このやり方であれば経済のダメージを最小限に抑えることができます。何より多くの人命が守られます

 今こそ医療界は絶対医学の殻を破って相対医学への道を切り拓くべきではないでしょうか。せっかく新型コロナウィルスがそれを教えてくれたのですから。

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