特別講演Ⅰ『痛みの真の生成理由ーその目的は脳代謝バランスの回復ー』

 脳にとって痛みは必要不可欠な情報処理システム。ウィルスの侵入に対して身体が発熱するのと同様に、脳は痛みを出すことで自らのエネルギーバランスを回復させようと試みる。

 脳内環境における代謝恒常性(ホメオスタシス)においては、準閉鎖的な血液還流システム(脳内の血流は一定に保たれる)があることが推断される。fMRIやNIRS等の脳機能画像に描出される「血流変化=脳代謝の全て」ではないが、今回の講義ではとりあえず分かりやすいイメージとして血流の概念を取り上げて解説。 

 うつ病、閾値下うつ、抑うつ状態の患者がもし激痛発作を起こしたなら、それは大うつ病の発症(うつ病の重症化)を回避するために行った脳の自衛措置だと言える。

特別講演Ⅱ『触るだけで改善する理由-ついにここまで分かってきた!触覚と脳の驚くべき関係!痛みが、認知症が、血圧が、不眠等々が改善するオキシトシンの力-』

 脳へのアプローチ手法が複数あるなか、触覚を入口にしたアクセスの有効性、優位性が科学的に証明されようとしている。先日NHKの番組において、触覚と脳の関係に迫る興味深い検証がなされていたので、その内容を振り返りつつBFIとオキシトシンさらにセロトニンとの関係について検証する。

特別講演Ⅲ『最新の脳科学が明かすマインドワンダリングと痛みの関係』

 慢性長期にわたる痛みを抱えると、多くのケースで無意識のうちに内的処理回路の異常発達が起こる。朝の起床(意識の覚醒)と同時に自分の健康状態をチェックする無意識の心理特性…、こうした内的処理回路を不活化させることは多くの臨床家にとって重要なテーマ。

 人間は生活時間のおよそ半分(47%)において、目の前のことを考えていないマインドワンダリング(心の迷走、心のさまよい)状態にあることがアメリカの実験で判明した。

 たとえば学校の授業中、教師の話に集中して脳がその内容を処理している時間は半分に過ぎず、残りの半分において脳内意識は別のところをさまよっていると言える。このときの言わば“夢想”の中身が過去や未来に関わる楽しい出来事(前日の彼女とのデート、次の週末に行くデートはどこに行こうか…)の場合、これを“正のマインドワンダリング”と呼び、反対に病気や事故などネガティブな状況について考えてしまっている場合を“負のマインドワンダリング”と呼ぶ(当会による新たな定義づけ)。

 痛みに悩む多くの患者に見られる負のマインドワンダリングを止めさせるにはどうしたらいいのか?その簡便な方法―患者との会話テクニックーを披瀝し、これによって劇的に回復した実例を紹介する。

特別講演Ⅳ『意識のハードプロブレムに挑む!ー脳内意識重心仮説ー』

 脳内には意識の本態(私は私である)すなわち自我を形成するハブ・ネットワークがあり、これが足底の重心のごとき脳内を移動することで、外的処理あるいは内的処理に特化したタスクを実行する。この際の意識重心の移動がまさしくマインドワンダリングであり、DMNがこれに深く関わっている!

 脳内において広域同期的に働く特殊な神経回路網のひとつ、DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)。これが慢性痛、認知症、うつ病、発達障害、統合失調症等に関わっていることから、当会は「意識と無意識のあいだ、すなわち境界意識とも言うべき神経回路がDMNであり、意識と無意識を繋ぐチャネルのごとき役割を担っているのではないか」という説を掲げている。今回この自説をさらに進化させたものを発表する。

 脊髄のベルマジャンディの法則(信号の通り道は後ろから入って前から出ていく)は、実は脳にも当てはまる。中心溝から後ろ(頭頂葉、側頭葉、後頭葉)は下図に示す通り信号入力の場が多くを占めており、それより前(前頭葉)は出力反応の領域となっている。

 したがって脳を上から眺めた時、前方は出力(output)、後方は入力(input)を担っていることが分かる。人は出力と入力を同時に意識に捉えることはできない。また外的処理(外界の環境を知ろうとする働き)と内的処理(内界すなわち自己の内面を知ろうとする働き)もやはり同時に意識することはできない。

 つまりこれらにおいて意識は同時併存することができないのであるから、もし自我中心(意識重心)なるものがあるとするならば、それらの領域を移動するのではという今回の仮説にひとつの整合性が得られる。

 意識重心の本態がジュリオ・トノーニの「統合情報理論」におけるアルゴリズムで証明され得るものなのか、それともハメロフらが唱える「量子脳理論」によって解明されるのか、そもそも完全否定されるのかは何とも言えないところではある。

 今のところ筆者はトノーニとハメロフの両者の考えを融合させたような、そんな理論の先に答えらしきものが見えてくるのではと想像しているが、とりあえず意識重心という概念は一つの物の捉え方として面白い発想ではあろう。

 ちなみに意識重心が境界意識(DMN)から無意識の領域に深く沈んだ状況が睡眠であり、境界意識の水面ぎりぎりあたりにとどまっているとき金縛りに遭うことが想定される。

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